センチメンタル・スウィングス
病院を出ると、冷たい風が私の頬を撫でた。

寒い。まだ2月だからなぁ。
「毎日楽しんで生きてください」と先生から言われたとき、私はなぜか、あの人・・・和泉さんの、低く豪快な笑い声と、屈託のない笑顔が思い浮かんだ。

少し日に焼けた肌、ツンツン立たせた真っ黒な髪。
そして笑うと細くなる、くりっとした目に、真っ白な歯・・・。

いつも弾けそうなくらい元気な和泉さんは、まさに生きた塊で、先生の言う「楽しんで生きる」を地で行ってる人だと思う。

病気の再発の心配もなくなった今、私はそこに囚われていることは、もうないと思う。
でも・・・何事にも積極的じゃあなくなったと思うから、毎日楽しんで生きてはいないのかもしれない。

私は、ベージュのカシミヤコートの襟元に顎を埋めるように、首をすくめると、駐車場の方へ歩き出した。


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