センチメンタル・スウィングス
「ずっと一人で抱えて怖かったんだよな。だがもう一人で抱える必要はないし、一人で闘う必要もない。少しでいいからその気持ちを手離してみろ。少なくとも、俺のことは信頼していいから」
「いずみさん・・・」

・・・こんなことを私に言ってくれた赤の他人は、この人が初めてだけど、この人はたぶん、過去にも他の彼女に言ったことがあるのかもしれない。
大勢いる女友だちの誰かに、普通に言ってるかもしれない。

この人にとってこれは、なんてことはない、日常的にある一コマなのかもしれない。

「な?」
「・・・所長に言われても、説得力ありません」

だから私はいつもどおり、可愛げなんて欠片もない言葉を所長に返すと、彼からサッと離れた。

もう二度と、私の心が傷つかないように。
いつもどおり、心の前に壁を築いて、心に鎧を身につけて。
感情を表に出さないように、何事も冷めた目で見ることを、決して忘れないように・・・。

私はもう、心から誰かを頼ったりしない。深入りもしない。
和泉さんとの恋愛なんて・・・。

もう始まってるわけ、ないじゃない。

< 37 / 150 >

この作品をシェア

pagetop