喫茶の謎解き意地悪紳士2


二人が行ってしまうと、詩音は改めて舞の携帯電話をみつめた。

……何か違和感がある。

それは、画面の数字ではなく、数字をうったときに舞の血が付いた携帯のキーボード。

その血が何かを表しているように思えた。

「なんだろ……この感じ」

胸にモヤモヤとした感情が広がっていく。

「どこかで……」

詩音は額を押さえて、記憶の糸を手繰り寄せた。

先ほどまで晴れていた空は、いつのまにか重苦しい雰囲気に包まれていた。

やがて、

ポツッ……。ポツッ……。

「うわ、最悪。雨、降りだした」

「これじゃ外でテニスできないねー」

食堂に入ってきた女子大生二人の会話が、詩音の耳に届く。

それと同時に甦る、叶亜の言葉。

『真実とは信じる者にしか現れないよ』

降り始めた雨が、やけに哀しい音を奏でていた。

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