らぶ・すいっち



「そうよ、京香ちゃんは27歳でしょ? そろそろ結婚のこと、しっかりと考えてみない?」

 あまりの熱心さに、さすがに私も皿を洗う手を止め、水道のコックを閉めた。
 手をタオルで拭きながら、天井を仰ぐ。

「んー、結婚ですか。恋愛もほとんどしたことがないのだけど……」

「あら。結婚してから恋愛したっていいんだし。気軽に出会いを求めてみるのもいいと思うのよ」
 
 なんとか逃げようと目論んだものの、見事に失敗。
 人生経験豊富であり、口が達者なおば様たちにひよっこなど太刀打ちできるはずもない。

 しかし、これで何度目だろう。
 料理教室に通うおば様たちから縁談を勧められることが多くなってきた。

 確かに私も結婚適齢期に突入。30歳前に結婚したいなぁと漠然と考えてはいたが、出会いがないのだから恋愛も結婚もできるはずがない。
 それでも夢見てしまうのだ。
 物語みたいに完璧と言えなくても、どこかに私だけの王子様がいて迎えに来てもらえるんじゃないか、と。


< 2 / 236 >

この作品をシェア

pagetop