「えっ、レポート忘れたの?」

珍しい……というように、亜里沙が大きな目をさらに大きく見開いた。

「やってしまった……来週でも大丈夫かな?」

「まあ、この先生緩いから大丈夫だとは思うけど……どうしたの、何かあった?」

心配したように顔をのぞく亜里沙に、私は笑顔を返した。

「何かあったどころじゃないんですよね~」

「え!? なに、どういうこと、なにその笑顔逆に怖いっ」

だだっ広い講義室に、亜里沙の怯えた声が少し響いた。

何かあったどころの話ではない。断ち切ったはずの未練が、まだ全く断ち切れていなかったのだ。そんな元彼が今の担当で、私の家にしょっ中くる状況だなんて、あまりのストレスに心が痩せてしまう。

私は包み隠さず今までの経緯を亜里沙にぶちまけた。

「うわあ……まあ、がんばれ……?」

すると、彼女はあまりの私の不運さに薄笑いを浮かべ、引きつった笑顔で私を応援した。引いてるじゃん、この人もはや引いてるじゃん。

「ていうかまだ未練あったんだ……」

少し驚いたように、亜里沙はつぶやいた。

「もう断ち切ったと思ってたんだよ……2年も経ってるし……」

「んーでも、一之瀬さんはどうなんだろうね」

「一之瀬さんは、私に対して未練どころか恨みを抱いていると思う……」

だって、徐々に私が連絡を返さなくなって、終わってしまったから。そりゃあ私に対するイメージは最悪に違いない。

じゃああの時、私は一体どうすれば良かったのだろう。
もしあのまま付き合っていても、私はきっといつか一之瀬さんを拒否してしまったと思う。

別れた原因を思い出して、私は少し暗い気持ちになったけど、亜里沙がパチンと私の顔の前で手を叩いた。ハッとして顔を上げると、彼女はハッキリとした口調である提案をした。

「今日久々に飲もう! あとさ、もう新しい恋しようよ、バーでイケメン探しに行こう!?」

「後半は自分の願望だったのでは……」

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