それは、一度終わった恋[完]
「私のお父さん結構年いってて、はやく跡継ぎを育てたいんだと思います」
「なるほどね、でもいくらなんでもこの年齢でお見合いなんてしなくても……」
腕を組み感慨深そうに唸る佐々木さんを見て、私も自分の人生に思わず苦笑した。
結局お父さんに強く言われて、お見合い相手に会うことになってしまったし、私はこうやって親の言う通りに生きて行くのかな……。そんでいつしかどこぞの知らない金持ちのおじさんと政略結婚とかさせられてさ……。
自分の未来を想像して悟りを開いてしまうなんて、今の世の中本当夢がないわ。
「でも先生今まで普通にお付き合いの経験ありますよね」
「まあ一応は……」
「なんか今作を見て、すごくリアルだったから、もしかして先生も少し引きずってる恋愛とかあるのかなって思っちゃったんですけど」
佐々木さんはさすがに鋭い目を持っている。10年以上編集者をやっているだけある。
見事な図星だったので、私はなにも誤魔化さずに苦笑いをして、ばれました? とおどけてみせた。
「でも先生って、なーんにも文句も言わずにひたすら溜め込んで勝手に辛くなって勝手に離れちゃいそうですよね」
「待ってくださいその通りすぎてぐうの音も出ません」
「もっとバカになるくらいわがまま言って勝ち取る恋愛とかしてみていいと思いますよ、先生は謙虚過ぎるんですよ」
うーんなるほど……。
佐々木さんの鋭い意見に私は言葉をなくした。
わがままを言って勝ち取る恋愛だなんて……そんなことしたことない。
「いっそその引きずってる恋愛も、最後にとんでもないわがまま言って終わらせてやったらどうです? 自分のことだけ考えて行動してみたら、意外と新しい扉開けるかもですよ?」
「佐々木さん意外と考え方肉食なんですね……」
「あったりまえですよー! じゃないとアイドルのカメラマンの妻なんてつとまらないですよ!」
パワフルな笑顔を見せてくれた佐々木さんから、私はかなり元気をもらった。
もし私があの時佐々木さんのようにパワフルに動けていたら、何か変わっていたのかな。
言いたいことを全部伝えていたら、何か変わっていたのかな。
そんな馬鹿なことを思いながら、私は佐々木さんの旦那さんとのキラキラした馴れ初め話を聞いていた。