あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






 ぐるぐるといろいろな思いが頭を駆け回る。


 あたしが魔界に来たのは、魔力を持っているから?


どうしよう。


こんな小説みたいな展開、本当に起こっていいの?


でも、もしそんな展開なら。


これはきっとそうだ。


 このカカオ王子と運命的な出会いを果たし、恋をするためにこうやって出会ったんだ!(ポジティブに解釈しました)


 納得して、満足したあたしはニヤリと笑った。



「わかりました。 あたしは魔力を持っているからここに来たんですね」

「……ああ」



 なんだか王子は、若干引き気味だったけど、気にしないことにした。



「ということで、とりあえずこの世界についての説明は終わりだ。 この後、行くところがある。 ……格好はそのままでいいか?」



 王子はあたしを上から下まで見回す。


 あたしは、高校の制服のままだ。


 白のポロシャツがあちこち汚れてしまっている。


緑のチェックのプリーツスカートも、そんなに寄れていない。


 埃は叩(はた)けば落ちそうだ。



「大丈夫です!」

「そうか、なら行こう」



 王子は本を指先でトントンと叩いた。


 すると、本はフワリと宙に浮き、開くとページをパタパタと翼のようして使い泳いでいく。


 そして、本棚にキレイに納まった。


 わぁ。


 心の中で拍手をする。


 現実離れしているけれど、あたしの胸はなぜか高鳴っていた。


ここは、本当に魔力のある、異世界なのだ。


あたしは、本当に異世界に来たんだ、と。


 
< 37 / 335 >

この作品をシェア

pagetop