清掃員と経営者

「お疲れ様。4Fの村上さんだよね。俺営業課の川瀬。覚えてる?」

「川瀬さん!お疲れ様です。覚えてますよ〜。」

「今日は直帰だったから社とは反対側で飲んでたんだよ。まさか村上さんに会えるなんて嬉しいなぁ〜。良かったら一緒にどお?」


その誘いは瑠美達にとってはあまり嬉しくないお誘いだった。今日は知り合いのいない飲み屋で愚痴りながらチビチビ飲みたい気分たったので、早紀子と目配せしてから川瀬の誘いは断ることにした。


「すいません…。今日は女子会なんで、また今度誘って下さい。」

「そ、そうだよね。ゴメンね、なんか気付かなくって…。」


そそくさと退散した川瀬に愛想笑いを浮かべつつ、再び飲み始める。知り合いが近くに居る緊張感から早紀子が少し小声で瑠美に話し掛けてきた。


「ねぇ、川瀬さんって社内の女性に点数つけて自己採点が70点越えないと声掛けないって噂だよ。」

「いるよねぇ〜、そーゆー人。人に点数つける前に自分が何点か分析してほしい。」


1年近くも務めていて色んな噂を耳にした。特に色恋沙汰に関する噂は人伝いに肥大していく。瑠美は川瀬の噂を聞いたところで特に驚く事もなかった。


「でも瑠美ちゃんに声掛けるって事は、70点越えって事か?やるじゃーん!」

「ははは。嬉しくなーい!」


お酒のせいもあり、その後はふざけながら早紀子と楽しい時間を過ごして帰宅した。
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