――大学の定期試験が明日から始まるという、梅雨も明けた7月の終わりの日曜にそれはやってきた。


リビングのテーブルいっぱいにノートや資料に参考書などを広げ、コーヒー片手にサンドイッチを口に放り込み、静かな部屋でひとり黙々とシャーペンを走らせる。

と、ソファの上に放り投げておいたスマホがマナーモードで震え出した。


「もしもし?」

「――俺だ」

「あ…はい…」

こんな低い声で俺だなんていう人、私が知ってるのは一人だけ。


「今から帰る」

「は…?――藤堂さん?」

ひと言で切れてしまった電話に、小さく溜め息を吐きながら首を傾げた。


――…これって、いわゆる「帰るコール」というやつ?

でも、時計をみると、まだ昼の1時過ぎで。

仕事から帰るにはあまりも早すぎないだろうか?


藤堂さんは31歳にして、いくつもの飲食店や不動産を持つ会社の社長。

忙しい藤堂さんは基本的に休みはなく、日曜の今日も早朝に出社してて。

普段は夜中にしか帰って来ないし、ましてや帰るメールはおろか、帰るコールなどかかってきたことがない。



「あっ、こんなこと考えてる場合じゃない!片付けなきゃ」


会社からここまではかかっても車で15分ほどの距離で、道路が空いてれば10分もかからない。

慌ててテーブルの上のノート類を片付けていると案の定、インターホンが鳴った。




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