「あの、今日は何時ごろここを出るんですか?」

大学の定期試験1日目、藤堂さんがドバイへ出発する当日の朝8時。

昨日の午後、用事があると出かけた藤堂さんが帰ってきたのは深夜遅く。

なのに、今朝はもう会社に行く時と変わらないスーツ姿で新聞を読む藤堂さんに問い掛けた。


「9時前には出る。仕事を片付けて、会社から直接成田へ行く」

「え…?荷物とかは?」

「秘書が全て用意してる」

「はぁ…」

海外へ行くというのに全く荷造りしている様子がないのでどうするのだろうとおもっていたのだけど。

まさか荷造りを秘書の人がやってくれるなんて思いもしなかった。


―――…今日の試験は6時限目まで。

それから成田に行って間に合うだろうか?


「えっと…今日、私―――」

「成田には来なくていい」

「えっ……?」

「試験に集中するんだろう?」


新聞から、こちらに視線だけを投げて寄越す藤堂さん。


「……でも」


――…しばらくは会えないかもしれないのに。

夜遅くの出発なのに、今ここで見送ることに心が揺れる。


ただでさえ忙しい藤堂さんは急な出張が入ったら時間がないのは当たり前で、その事に私が何か言える立場じゃないのは嫌というほどわかっている。


「……」

でも、表情を変えることなくコーヒーを飲む、冷たい横顔が少しだけ恨めしい。


――…もう、行く前からこれじゃ、ダメダメじゃん。

昨日は大丈夫と思った自分がもう揺らいでいることに呆れながら、朝食の食器を片づけるためにキッチンへ向かった。




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社長  王様  溺愛  激甘 

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