マネー・ドール -人生の午後-

(3)

 中学の時、母親が連れ込んでいた男に、乱暴された。
それ以来、男の人が怖くて、憎くて、何より、自分の体が憎かった。この胸も、お尻も、男の人が好む体って、わかってた。
 貧乏で、ネグレクトで、いつも体に合わない服を着さされていた私の体は、余計にそれを目立たせて、本当に、男の人の視線がイヤで、つらくて、そんな私を、いつも守ってくれたのが、将吾だった。
 乱暴された後、将吾はその男を殴って、警察に捕まった。その男を殴り続けた将吾の拳は、真っ赤に腫れて、血が滲んで、それでも、将吾は、泣きながら、何度も何度も、私の目の前で、その男を、殴り続けた。
顔には、男の血が飛び散って、その時の彼は、まるで、鬼のようで、もうやめてって言った私の手を握って、遠くに逃げようって、真っ赤な手で、血の飛び散った制服で、私達は、必死に走った。
でも、私は、もう、死んでもよかった。このまま、もう、死んでしまいたいって。

 このまま生きていても、もう、私は……
「もう、いい」
「何がええんじゃ!」
「将吾、あんた、一人で逃げてつかあさい」
「何言いよるんじゃ! 俺と真純は、ずっと一緒じゃ! 俺は何が何でも、お前を守るんじゃ!」
「将吾……私……もう、死にたいんよ……もう、こんな生活……耐えられんけ……」
「……お前が死ぬときは、俺も一緒に死ぬじゃけ」

 結局、船着き場で隠れていた私達は、あっさり警察に見つかってしまう。でも、私は施設に送られて、あの母親と完全に離れることができて、高校へ進学する。そして、私は決意する。

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