僕と8人の王子
僕を抱きしめた翡翠は手の力を緩めようとしなかった。
急に抱きしめられて戸惑っているはずなのに、不思議と居心地が良かった。
そのままの状態でどれ位経ったか覚えていない、でもやっと離してくれた時には僕は翡翠の胸の中で安心しきっていた。
ふと我に返って何故こうなっていたのか、状況を再認識した僕。
「僕は、女じゃ...」
すると翡翠は驚いた顔をしてから笑った。
「?」
「わかったよ。ひなは男の子だよ。誰にも言わない」
「本当に?」
「うん。そんなに必死になるって事はそれなりの理由があるんだよね?」
翡翠の前では隠し事は出来ない。
僕はここに入学した一切の理由を話した。
「そっか、大変だったね。でも、ひなのお父さんがこの学校の理事長だったなんてね。ひなが入学できたこと、ますます疑問だよ」
「そうだよね。何でだろ?」
口ではそんな事を言いつつも、心の中では翡翠が黙っててくれるってだけですごく嬉して、そんなのどうでもよかった。
そんな安堵の中。
お風呂から帰って来たある人物にその光景を見られていたなんて、思いもしなかった。