イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「梅園桜子です。どうぞよろしくお願いします」

挨拶はごく普通のいいとこの令嬢といった感じ。

だが、食事が出されると、顔が綻んで目を輝かせながら顔合わせそっちのけで食べる事に集中。

やっぱり……変わってない。

思わず口角が上がった。





あれは高校三年の春。入学式で祝辞を述べて、校舎に戻ろうと渡り廊下を歩いていると、桜の木の下で女子が寝ていた。

胸にピンクの花をつけているし、新入生だろう。

しかし、入学式をすっぽかすとはたいした度胸だ。

放っておくわけにはいかない。

一旦校舎の外に出て彼女に近づいて顔を見てみると、桜の妖精かと思うくらい色白で可愛い顔をしていた。

桜の花びらがヒラヒラと舞って彼女の顔に落ちる。

屈んで落ちた花びらを取ってやると、彼女にガシッとその手を捕まれた。
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