「…博人さん」


彼女が困ったように、デザインブックから顔を上げて俺を見る。



「あまりに多すぎて選べません」

「美智子ちゃん、」


捲っていた違うデザインブックを閉じ、彼女へ顔を向けた。



「そんなこと言わないで選んでよ。――だって、「たぶん」一生に一回しか着れないよ」


彼女の横で、知らん振りを決め込む冷たい貌の男にチラリと視線を投げる。



「…自分に合うのが、どんなのかもわからないし」


溜め息を吐いて俺と同じ方へ視線を向ける彼女。


すると、



「――自分が着たいものを選べばいいだろう」


手にした英字の経済誌から目を離さぬまま、兄貴が低い声を出す。




――ここは、俺の兄である藤堂貴之と、その妻になったばかりの美智子ちゃんが暮らす部屋のリビング。


1か月後にセイシェルでの結婚式を控え、美智子ちゃんが着るウェディングドレスのデザインを選んでもらっているのだけど。



この作品のキーワード
溺愛  激甘  俺様  社長 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。