愛したのが君で良かった
愛したのが君で良かった



鈴木 希子(のりこ)、17歳。


私の特徴は低い身長に、横幅が広い、この体。


低い身長に、横幅が広い、もっと分かりやすく言い換えれば“デブ”。



普通、デブちゃんのイメージってお腹や太ももが太い、そして胸も大きい、そんなんだけど、私の場合はお腹や太ももが太い、そして胸はぺったんこに等しい。


だからワンピースなんて着れば妊婦さんに間違われるし、ジーンズなんて履いたら、このぱつんぱつんの太もももくっきり分かってしまう。



本当に、本当にいいことのない、私のデブ人生。



だから、“恋愛”なんて私には有り得ないと思ってた。


“恋”はあっても、“愛”に変わることはなくて、一方通行はあっても、恋は成就しない。


ずっと、ずっと、この体型を意識するようになってから、“恋愛”を捨ててきた。


そして、これからも。







でも、私の恋はすぐにやってきた。



それは、高校の入学式の日。

新しい教室に、新しいクラスメート、新しい担任に、新しい机。


春の一大イベントとは、“自己紹介”である。


一人ずつ、自分の席のところで自己紹介をしていく。


男の子は中学の時にはいなかったようなカッコイイ男の子もいたし、女の子は可愛い子、綺麗な子がたくさんいるクラス。



そして、私の番がきた。



私は早る気持ちを抑え、軽く深呼吸をしてから口を開く。



『鈴木希子と申します、宜しくお願いします』


私が言い切る前に、すぐ近くの男の子たちが私のこの体型を見て笑い出す。



ほら、だから自己紹介とか嫌なの。



でも、もう慣れた。


だって毎年の春の一大イベントだもの。



私が椅子に座ると、さっき笑っていた男の子たちが声をかけてきた。



『ね、体重いくつ?』



デリカシーのない奴、私はそう思ったけど、でもね…


自分が悪いことは分かってる、でも、それでもそういうこと言われたくないの。




でも、男の子たちはクスクスと笑ってた。





『俺、60キロ』


その声は、私の隣の席から聞こえた。




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