私の横に居る人
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「お帰り。」

お母さんが玄関で迎えてくれる。

「すいません、お言葉に甘えて悠さんを一晩お借りしました。」

お母さんの後ろからお父さんも顔を出す。

「こちらこそ、迷惑をかけたね。」

珍しくニッコリと笑うお父さん。

「さあ、入って。ここじゃ寒いわ。」

お父さんと智樹は居間でお酒を飲み始めた。

私はお母さんに付いて、キッチンに入った。

「悠、幸せそうな顔してる。変な力が抜けて優しい雰囲気だわ。」

お母さんからの先制攻撃。

「…そっ、そうかな。自分では分からないけど。」

つい恥ずかしくて、素っ気なく答えてしまった。

「斉藤さんたらね、実は夜に悠に内緒でってもう1回電話をくれたの。結婚を前提として悠と付き合いたいって、ちゃんと言ってくれたの。 初めは渋い顔をしていたお父さんが、最後には泣きそうな顔をしてね。こちらこそよろしくお願いしますって、電話の前で頭下げたのよ。斉藤さんの誠意がしっかり伝わったって、電話を切った後、私にもちゃんと話してくれた。」
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