どうぞ、ここで恋に落ちて

これで、お客様がもっと好きな本を見つけやすくなるかもしれない!

期待にぎゅっと手を握って見上げると、樋泉さんは私と同じくらい、とっても嬉しそうに笑ってくれた。


「高坂さんのオススメの本を、誰かが好きになってくれるといいですね」


私は彼に向かって大きく頷く。

樋泉さんは、本の見せ方や並べ方について、いつもさり気なくアドバイスをくれる。

ミエル文庫の売り上げには直接関係のないことなのに。


だから私にとって彼は尊敬する人で、憧れの人だ。

仕事に関して、一期書店の先輩以外に、ここまで素直に信頼を寄せられる相手は他にいない。


樋泉さんはもうずっと、私にとってそういう存在なの。

私が文芸書フロアの担当者になった、1年前のあのときからーー。
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