蟲狩り少女
教室へ入ると、いつも通りクラスメイトたちが挨拶をかわす。


自分の席へ座ると、光磨が机に突っ伏して寝息を立てている。


高熱を出して以来、あたしは光磨にどう謝罪していいのかいまだにわからずにいた。


もちろん、言葉で『ごめんなさい』や『ありがとう』と伝えることはしている。


だけど、それ以上のことを光磨はしてくれたのだと思うのだ。


熱が出ている体を引きずって登校してきた光磨は病気を悪化させて、結局1週間近く学校を休むことになってしまった。


勉強ができる光磨だから、特別試験を受けて進学には影響が出なかったようだけれど、それでもかなりの迷惑をかけてしまった。


それ以来、自分にできることはなんだろう?と、光磨の背中をぼんやりと見つめながら考える時間が増えていた。


光磨本人に相談したって、『気にするな』と言われるのが目に見えている。
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