シンデレラに恋のカクテル・マジック
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。顔を見て容体を聞いたら戻ってこようと思います。会いたがってくれているとはいえ、私は駆け落ちした娘の子どもです。祖父がどこまで快く見舞わせてくれるかわかりませんから」
「大丈夫だよ、こうして捜し出してくれたんだから」

 永輝が言って菜々を抱き寄せた。彼の大きな胸に包まれていると、不安でいっぱいだった菜々の心が徐々に落ち着いてくる。

「永輝さん……大好きです」
「俺もだよ。菜々ちゃんの居場所は俺の腕の中なんだ。それだけは忘れないで」

 永輝の低い声が胸に染み込んできて、菜々の目頭が熱くなる。

「すぐに戻ってきます」

 永輝が菜々を抱く腕に力を込めた。その力強さと温かさに浸りながら、菜々はずっと彼のそばにいられますように、と心の中で祈った。
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