結局その日はお好み焼きとノンアルコールカクテルをごちそうになって、菜々は八時前、永輝の部屋を出た。彼の気分に応じて営業時間が変わるというサンドリヨンは、その日は午後八時からの開店となった。


 翌月曜日、菜々は個別指導塾で講師のアルバイトだ。講師たちは通路に置かれた椅子に座って、両側のデスクに座る学生をそれぞれ指導する。一人の講師が一度に二人の生徒を受け持つのがこの塾のスタイルだ。菜々がおもに担当するのは、中学生と高校生の国語と英語と数学。いくらアルバイトとはいえ講師に徹するこの時間は、セミロングの黒髪をきちんと後ろで束ね、チャコールグレーのスーツ姿で教える。

 火曜日はブラウスを淡い水色のカットソーに替えて同じスーツを着て、予備校の受付の仕事をした。バイトに行くときは土曜日に着た紺のスーツか、今日のチャコールグレーのスーツのどちらかを身につける。仕事柄、きっちり見えることが必要だからなのだが、今日、火曜の夜、これから向かうサンドリヨンは、菜々にとって初めてとなるバーでの仕事だ。

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