翌日の土曜日、菜々はすっきりした気分で目を覚ました。携帯電話の時刻表示を見ると、まだ六時半だ。

(永輝さんは起きてるかな?)

 静かに起き上がってクローゼットを開けた。大学時代に着ていたブラウスとスカートを出して着替えて、部屋のドアを開ける。足音を忍ばせて階段を下り、洗面所で顔を洗った。バッグの中のポーチを出してメイクをしていると、二階で客間の扉の開く音がして、永輝が階段を下りてきた。

「おはよう」

 彼はもうパジャマ姿ではなく、昨日着ていたバーテンダーの白いシャツと黒のスラックスに着替えていた。彼からパジャマを受け取りながら、菜々は挨拶を返す。

「おはようございます。昨日は無理を言って泊まっていただいて、すみませんでした」
「菜々ちゃんは相変わらず他人行儀なんだな。お互いのこともずいぶんわかってきたし……もっと気楽にしてくれていいのに」

 永輝が伸びをして言った。

「そ、そうですか」
「うん。タメ口でいい」
「タ、タメ口……」

 大学卒業後、証券会社で四年、オーナー・バーテンダーとして二年働いている永輝は、現在二十九歳、もうすぐ二十三歳になる菜々とは六歳の年の差がある。

(そんなにも年上の人にタメ口をきいていいのかな)

「その方がもっと距離が縮まりそうだろ?」

 永輝が照れたように笑った。彼ともっとお近づきになれたら嬉しいけれど、彼は菜々の両親の写真に向かって〝そばで見守っていきます〟と話しかけていた。つまりは保護者代わりということなのだろう。

 そう考えると菜々の胸が締めつけられるように痛んだ。菜々がその痛みの理由を考える前に永輝が言う。

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