ひねくれ作家様の偏愛




「じゃ、来週までに直し入れてメールしておいてね」


海東くんの部屋のソファで向かい合い、私は微笑む。
淹れなおしたばかりのコーヒーと、一緒に食べたシュークリームの敷紙。
海東くんは素直に頷いた。


「わかりました。たいした直しじゃないので、明後日までには送ります」


「無理しなくていいよ。あ、近いうちに『ともし火』の木原編集長が挨拶に伺いたいって言ってた。その時、私も契約書を持って同行するから」


私は原稿を揃えて、鞄にしまう。
改めて海東くんに向き直ると言った。


「連載決定、本当におめでとう」


海東くんは照れくさそうな笑みを浮かべたと思うと、あっという間にいつものツンとした顔に戻ってしまった。


「別に運が良かっただけです」


「えー、カタチだけでも『桜庭さんのおかげです』とか、言ってみない?」


「言いませんよ。俺の実力ですから」


そう言うと彼はふっと頬をゆるめた。
私もつられて、笑う。
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