ひねくれ作家様の偏愛
海東くんがどんな顔をしてるかなんて、わからない。

きっと、ものすごく怒り狂っているだろう。

私にコケにされるなんてプライド的に我慢ならないはずだ。
ほら、今だって言葉もないのは憤怒のために違いない。


ドアを開け外に出ると、玄関を閉めるためようやく振り向いた。

しかし、閉まるドアの隙間に見えた彼の顔は、想像とは違った。

彼の端正な顔は、捨て犬のように頼りなく歪んでいた。

切れ長の美しい瞳が自失で色を失っている。
いつも自信満々に釣りあがっている唇は薄く開き、言葉を発さない。


「それじゃ」


後ろ髪を引かれないように言い切って、私はドアを閉めた。




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