ごめん、好きすぎて無理。

海の中での約束





病室を離れたものの、家には帰れないー…




海とどんな風に顔を合わせていいか、いや、なんて話しをしたらいいか分からない…。






とりあえずで駐車場に停めていた車のところまで戻り、運転席に座る。



運転席に座った瞬間、今までの緊張からの疲れなのか、一気に体が重く感じる。




俺は運転席の背もたれに体を預け、目を瞑る。


目を瞑ると海の顔、お父さんの涙、紗奈の想い、それらが一気に俺の脳内に思いだされ、そして心を締め付ける。







だめだ…



こんなことを考えるよりも、これからどうするかだ。




ない頭を必死に捻り、何度も何度も考えを絞り出す、も、なかなかいい考えが思いつかず、俺はいつの間にか寝てしまっていた。










~♪~♪~♪~



携帯の着信音でハッと目を覚まし、携帯を確認する。


表示されたのは、“紗奈”という文字。




俺は通話に切り替え、そして電話越しに声を発した。







『………もしもし』






『……失礼ですが、娘は…紗奈はあなたのところに行ってませんか?』





電話越しに聞こえる女性の声、紗奈のお母さんの声だと認識する。






『…え、病室にいるんじゃ……』





どうして紗奈の携帯から紗奈のお母さんが電話をかけてくる?


どうして病室にいるはずの紗奈が俺の所に来てるかを聞く?


紗奈のお母さんの問いかけ、自分自身に振った問いかけ、それらを繋ぎ合わせていくと嫌な予感しか浮かばないー…







『……ほんの少し、私たちが離れてる間に…紗奈、病室から抜け出したみたいで……。

 海君にも連絡はいれてみたんだけど…海君からも来てないって言われて…』






紗奈の行方、紗奈の安否を気にするあまり、お母さんの動揺は電話越しからでも十分に伝わってきた。












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