ごめん、好きすぎて無理。





『…………紗奈…』



突然のことだったからか、

それとも意表を突かれたからか。



俺はその名を口にする。








『陸、どうしても私を好きにならないなら、
 私のお願いを聞いて?』




背中に伝わる、紗奈の熱。


生身の人間の温かさ、なんてものじゃない。


怒ってるのか、怨みのある思いがそうさせてるのか、紗奈から伝わる熱はとても熱く感じた。









『…なにそれ。
 お願いなんて聞くつもりない。
 むしろもう俺に関わんなよ』




『陸が…
 陸が私のお願いを聞いてくれたら、
 全部叶えてくれたら、
 そしたら海君とずっと一緒にいてもいい…』






なんだよ、それ……



海とは一緒にいてほしい、けど。


その交換条件は何?








『紗奈、ふざけてんの?
 お前は海の彼女、お願いなんて海に言えよ』






でも、俺の言葉に紗奈は俺の背後を抱きしめる腕の力を強めた。







『だめ、海君じゃなくて陸じゃなきゃダメ!
 陸、私のこと嫌なんでしょ?
 私のことなんて嫌い、ウザいんでしょ?
 だったら、私のお願いを聞いてよ…。

 そうしたら私は二度と陸の前に現れないから…』






俺は紗奈が回している腕を掴み、無理矢理その腕を引き剥がす。






『……お前のお願いってなんだよ?』










< 32 / 159 >

この作品をシェア

pagetop