ごめん、好きすぎて無理。



『陸にお願いしたいこと、三つあるの。
 それを全部叶えてくれたら、私は海君の傍にいる。
 全部陸がお願い通りにしてくれたら、二度と陸の前に現れない…

 だから、三つだけ、私のお願いを聞いて…?』





紗奈がなんて言い出すのか、それは俺が出来ることなのか、全然分からない…




それでも俺は紗奈の言葉に、“分かった”とだけ答えていた。







『一つ目は、何?』



俺がそう問いかけると、紗奈はユックリと俺の方に回ってきて、視線を合わす。








『私とデートして?』



紗奈のその熱い視線、そしてその言葉。


俺は一瞬怯んだ、でも海のため、自分のため、そう言い聞かす。




でも、紗奈を純粋に、そして一途に想う海の顔が脳裏を過る。



例え会うこと以上のことがなかったにしても、完璧な裏切り…







『陸、もう降参?
 “いいよ”って言ってくれなきゃ、私は海君と別れるよ?
 こっぴどく海君を傷つけて、それで別れるよ、私…』





半ば脅迫のようにも聞こえる、紗奈の言葉に俺は“分かった”とだけ答える。









『陸、本当に弟想いなんだね。
 陸が心優しい人間で良かった』



紗奈はそう言って、フッと笑った。







完全に紗奈の思惑通りに俺は行動してしまってる、そんな気がする。



でも、海のため、海の想いが報われるため、海のあの幸せそうな顔を守るため、俺は一人何度も自分の心に言い聞かせた。



今は海の彼女、しかも海と付き合ってることを知りながらも海のいないところで二人で会うこと、それは海への裏切り行為だ…





でも、たった一回会うことで、海の全てを守れるなら、紗奈の思うとおりに…










『だからムカつく……』






紗奈の言葉に俺は“え”と声を発する。







『海君よりも私を優先してほしかった、けど。
 でも陸とデート出来るんだから良しとするよ』







そう言って笑った紗奈は俺の知らない紗奈、だったー…











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