ごめん、好きすぎて無理。





『でも陸はいいよなー』




海はそう言って、視線を上にずらし、ため息をひとつ吐いた。






『…何が?』





『陸は日曜にデート。
 俺は日曜なのに彼女から用事が出来たとか言われて会えなくなるし…』






海のその言葉に、俺は静かに海を見つめる。




海の大事な時間、

海の幸せな時間、

海の貴重な時間、


俺が紗奈と会うことで、海の時間を奪ってる…




いくら紗奈の方から誘われたとは言え、それでも海がこうやって悲しそうな顔をすること、最初から想像できたはず…


いや想像した、でもそれでも俺は紗奈の言葉を受け入れたー…







『………ごめんな』




海の時間を、紗奈と過ごす時間を奪って。


お前の大事な彼女と裏で会うことになって。



その思いから俺は海に謝罪したつもりだったんが、俺と紗奈のことを知らない海は苦笑いをしながら、“陸は楽しんでこいよ”とだけ言ったー…






到底楽しめるはずがないー…



弟の幸せな時間を奪うこと、弟の大事な彼女と会うこと、どちらも罪悪感が強くて。


元カノと会う憂鬱さ…





どれも、俺がこれからの時間を楽しめるはずがないとする、要因だー…








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