ごめん、好きすぎて無理。





紗奈が待ち合わせ場所に選んだところは、大峰公園ー…



俺は罪悪感、憂鬱さ、不安、様々な感情を抱きながら、海に見送られ家を出た。







家を出て、少し歩いた先に見える、公園ー…



ふと公園の中に視線をやると、あの日のベンチに腰掛けている紗奈の姿が目に入った。





紗奈の姿を見て、引き返そうか、悩んだ。



今、俺が紗奈の元に行ったら、本当に海にどういう顔で、どういう態度で接すればいいか分からなくなる気がしたからー…








でも、神様は残酷なお方です。




悩み、足を動かせないでいる俺に紗奈は気付いて、そして俺の所まで小走りでやってきた。








『陸、来てくれたんだね!』



目を輝かせて、そう俺に言う紗奈は本当に可愛らしいー…



本当の彼氏彼女なら、彼女にそんな輝かしい目で、愛しい笑顔を見せられたら、今すぐにでも抱きしめてるだろう…





でも、紗奈は海の彼女だ。


俺が触れていい女じゃない。



てか、紗奈が海と一緒にいてくれる為に、二度と紗奈と俺が会わないようにするために来たんだから、そんなことをしていい訳じゃない。










『……陸、来てくれないって思ってたから』




そう言って、今度はシュンとした表情に変わる。



この子は天然ですか、それとも確信犯ですか。


そう、嘆きたくなるくらいに紗奈はシュンとしている。








『二度と会わないため、だから…』




俺がそう言うと、紗奈は困ったように微笑んだ。








『どうして顔は似てるくせに、
 一人は私を想ってくれて、もう一人は私のことが嫌いなんだろうね…』







『彼氏かそうじゃない奴か、の違いだろ?』






『でも、今日は…
 私の今日の彼氏は陸、なんだけどな…』





その紗奈の言葉には何も続かない。










< 37 / 159 >

この作品をシェア

pagetop