溺愛オフィス

【別れのとき、です】



間に合うか、間に合わないか。

搭乗時間を考えれば、ギリギリで。

それでも、出来る限り急いで成田空港へと向かった。


幸いにもトラブルもなく空港についた私は、桜庭さんが乗るニューヨーク行きのゲートがある第二ターミナルを目指す。

大小様々なスーツケースをひいて歩く人の間を縫うように進んで。

国際線出発ロビーに到着すると、私は呼吸を乱しながら辺りを見回した。


広すぎて、パッと見ただけでは桜庭さんの姿が探せない。

私は急いでスマホを手にし、桜庭さんに電話する。

実は、ここに来る前も一度電話を入れた。

けれど、電源を切っているのか電波がないのかで繋がらなかったのだ。


今度こそ繋がって!


願ってみたけど、虚しくも再び留守番電話に繋がるだけ。


時計を見れば、もう三時半を過ぎていた。

航空会社のチェックインカウンターに視線を走らせても、桜庭さんの姿はなく。

私はスマホを手にしたまま、出国審査が行われているエリアに移動した。


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