夕暮れの、学校からの帰り道。


茜に染まる道や濃くなる影に紛れて、彼女は友達らしき女子高生と共に、颯爽と歩いていた。


長く艶やかに天使の輪をつくる髪をなびかせて、端正で可愛らしい顔の口角を上げていた。


…笑っていた。


何も知らず、無邪気に、無垢に、彼女は
鮮やかな微笑みを浮かべていた。


一度すれ違ったきりだったけれど、彼女が僕を夢中にするのにはその一度だけで充分だった。


あぁ、好きだ。


愛している。


一瞬すれ違っただけなのに、彼女の存在はいつの日か、僕の心の大半を埋め尽くしていた。


その日から僕は彼女のことを知りたくて仕方がなくて、必死に情報を掻き集めた。


彼女の名前は葉月 沙奈(ハヅキ サナ)だということや、彼女の年齢は高校二年生、十七歳だということ。


彼女の友達関係、趣味や部活動、好物や嫌いな物、何事にもまっすぐでとても明るい性格ということ。


…彼女の、全てを調べた。


けれどやはり話したことはなくて、すれ違っただけで、相手は僕のことなど微塵も覚えていないだろう。


だからだ。


僕は、彼女の中に存在していたい。


そう考えた末、僕は彼女を監禁することにした。


二月十八日。


バレンタインデーから四日後のこと。


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