ハートブレイカー
私の体が揺れる。
氷室さんがガタンと立ち上がったのが分かった。

ダメだ。私・・・倒れる。

「え?浪川さんっ!?」

案内嬢と派遣の松本さんの、うろたえた声が聞こえる。
氷室さんがこっちに駆け寄ってくる。

何よ、あの人ってば・・・こんなときでもやっぱり冷静で。
顔だって飄々として・・・るかな。

よく分かんないや、もう。

床に倒れて頭打ったら痛そう。
でもそれで意識戻るかも。
また現実逃避しちゃった、と思ったのを最後に、私の意識はプツリ と途絶え、倒れた。

彼のたくましい胸板へ。

「愛美(まなみ)」という声が・・・彼の低い囁き声が、耳元で聞こえた・・・気がした。

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