鏡怪潜〜キョウカイセン〜
私もまだ、鏡を見るのが怖い。


部屋のテーブルの上に置かれた鏡は伏せられたままだし、歯磨きや洗顔の時も、極力見ないようにしている。


そんな私でも、影宮さんに渡された鏡はずっと持ち歩いていた。


ないとは思うけど、また同じ事が起こった場合に備えて。


そして、借りたまま影宮さんの形見となってしまったから。


あまり話さなかったけど、あの事件を一緒に駆け抜けて、短期間で物凄く仲良くなれた。


これから先、そんな友達が現れるかはわからないけど、忘れたくなかったから。


真弥ちゃんも影宮さんも……樹森君だって、行動を共にした仲間だから。


そんな事を考えて、身支度を整えて、通学路を歩く。


いつもと変わらない町並み、変わらない朝の空気。


変わったのは、私の友達が少なくなってしまった事……。


学校生活で、一緒に笑い合える人が少なくなってしまった事かな。








「おはよう、菜月。なーに暗い顔してんの?」








ポンッと、肩を叩かれたような気がして、振り返ってみたけれど、そこには誰もいない。


咲良……。


空耳だとしても、久しぶりに声を聞けた気がして嬉しかった。
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