朝目覚めて無意識に隣の温もりを探す。

いくら彷徨っても目当てのモノに触れる事が出来なくて、やっと目を開けた。

「…あー、くっそ」

麗奈と一緒のダブルベッドで寝なくなって早三日。

あいつは相当怒っているのか、あまり目を合わせてくれないし、
触れ合う、なんてそれ以前の問題だ。

それでも朝食、弁当、夕食とちゃんと美味い飯を作ってくれる。

あまり目は合わないけど会話もする。

だけど俺のコンディションはイマイチ微妙で、言うなれば気分は普通に最悪。


「おはよう」

スーツに着替えて寝室を出ると、
キッチンで朝食を作り終わった麗奈と遭遇した。

「あ、おはよう。わたしもう出るね」

「…早くね?」

「あの…締め日で忙しくて」

「今日さ、早めに帰るからちゃんと話をしよう」

「……分かった、いってきます」

「…いってらっしゃい」

もうすぐ入籍するって言うのに、
出かける前のキスもないこんな状態でどうしたらいいのかと、頭を抱えた。


その日は只ひたすら業務に打ち込んだ。

同僚にも上司にもジロジロと好奇の目で見られた。

だけどそんな視線は無視して、
麗奈が作った弁当を食いながら今日どうやって話そうか悩んでいた。


玄関を開けたとき、奥の部屋に明かりが点いている事に幸せを感じる。

人の気配を感じれるだけで、安心する。


「ただいま」

「おかえりなさい」

「ごめん、遅くなって」

「え、全然早いよ」

「そっか」

「うん」

「………」

「……着替えて、きなよ」

「…うん」

本当は、今すぐ麗奈の肩を掴んで無理矢理にでもこっちを向かせたい。

だけど、これ以上余計な事はしたくなくて我慢する。

今回の俺、まじでびびってる。


着替えて麗奈の飯を一緒に食べ終わった後、
食器を洗う麗奈の姿を見ながらどう話を切り出そうかと考えていた。


「麗奈、あのさ…」

こっちに来て座った麗奈にそう切り出せたところで、
まさかのインターホンに邪魔される。


「え、誰だろう」

「俺、出ようか」

「ううん、私行ってくる」


そう言ってインターホンに駆け寄って行く麗奈のその後ろ姿を見て、
近いのに遠い、なぜかそう思ってしまった。




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