ある休日の昼下がりの並木道。

わたしと千尋は買い物してきた荷物をそれぞれ抱えながら歩いていた。

「あ、見て!可愛い」


ずいぶん年上の人に向かって、それは可笑しいかもしれないけど…

わたし達の前方には、おじいさんおばあさんが手を繋いで歩いていた。


「仲良しだな」

その二人を見た千尋がそう言う。


「わたしね、昔からああいうの憧れてたの」

「昔から?」

「そう。
何歳になっても手を繋いで歩くような夫婦って理想なの」

「それは俺に何か期待してるって事?」

「ち、違うよ!千尋は外でベタベタとか好きじゃないじゃん」

「まぁね」

「ね、千尋はどんな夫婦が理想?」

「俺?…んー、あんま無いけど。
でも理想ってまでじゃないけど、子供居ても名前で呼び合いたいとは思う」

「あー、それもいいねぇ。ちょっとピンポイント過ぎてびっくりしたけど」

「うるさいよ、お前が聞いたんでしょ」

「ふふふ。
わたしは後ねぇ、出来るだけ明るい奥さんになりたい」

「それって、憧れ?」

「ん?願望?あ、願望なら沢山ある!
何歳になっても少しでも綺麗に思われたい!
千尋とお似合いになれるように、10センチ……いや、5センチでいいから身長が欲しい!とか?」

「なんだそれ。話のテーマ変わってるし。
大体、麗奈牛乳飲めないじゃん!そもそも、とっくに成長期終わってるし」


そう言って可笑しそうに、楽しそうに笑う千尋を横目で見上げる。


…………うん、幸せ。




スーツとは全然違う印象になる休日のカジュアルな千尋とか…

ただジーンズに手を突っ込んで、
気だるそうに信号待ちしているその姿とか…

お揃いの結婚指輪をしたその綺麗な指だとか…

結婚したのに、
未だにわたしは千尋にドキドキさせられっぱなしなの。


「あ、一番大事な事忘れてた!一生千尋を想っていたい!」


力強くそう宣言したわたしを見て、
千尋はまた呆れたように、だけど少しだけ照れたように笑った。


そして、

「ほら」

そう言って、荷物を片手に持ち直して…

わたしに手を差し伸べてくれたんだ。


「え、嫌なんじゃ、」

「手繋ぐのはベタベタじゃねーよ」

「…うん」


ギュッと千尋の手を握った。

ドキッと胸が高鳴った。



「大好き」


千尋は、時々…

わたしの理想を、現実に変えてくれるから。




終わり

この作品のキーワード
切ない  勘違い  後悔  適齢期  過去  臆病  社会人  信頼  結婚  らぶらぶ