いつも明るい同期の加瀬君を、この世のどん底に突き落とす恐怖の電話は、四半期毎に無情に響く。


「ちょっと待って下さいよ~っ……」


もう週末の二十時を回った時間、フロアに残るのは全社員の半数程度。
それなりに閑散としたオフィスで、加瀬君は半泣き状態に顔を歪めて遠慮の欠片もなくそう叫んで、「あ」と短い声を発した後、手にしたPHSを呆けたように見つめた。


可哀想に。きっと、ろくな説明もしてもらえないまま電話を切られたんだろう。


加瀬君は、はあああっと深く長い溜め息をついた。
そしてうなだれながら電話を切って、デスクに突っ伏したっきり、這い上がれずにいる。


哀れだなあと思いながら、私は向かい側のデスクからその様子の一部始終を眺めていた。


私がこの会社に入社して五年。加瀬君と同じグループに異動してちょうど二年。
こんなに打ちひしがれる加瀬君を見るのは、これが実に八回目。
申し訳ないけど、まさに予想通りだった。


「……でも、頑張ったよ、加瀬君は」


毎回一緒の慰めじゃ芸がないと思いながら、口をつくのはいつもと同じ当たり障りなく白々しい短い言葉。
加瀬君もそれをわかっているから、突然ガバッと身体を起こすと、ノートパソコンをパタンと閉じてキッと私を睨み付けた。


強気な文句でも言って来るのかと思いきや。


「だよなっ。葛城、俺は今回いつも以上に頑張ってたよなっ!?」


もう取り繕う気力もないらしい。

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