山科部長が配属されて、営業部の雰囲気は一変した。以前はどこかのんびりとしていて、ある意味心地よかったが、生産性重視ではなかった。しかし今は違う。山科が社員を盛り上げ、緊張感を与える。近くで山科を見ていると、頭の回転、人を率いる力が秀でているのが、本当によく分かった。


どこで見つけてきたんだろう、こんな人。
園子は猛然とタイピングしていた手を止めて、山科の姿をちらりと見た。


あ、電話してる。
眉間に皺がよった。
怒ってる?
誰と話してるんだろう。


「園子、また山科部長見てる」
紀子がからかうように言った。


「え? だって、不思議じゃない? あの人一人入っただけで、なんだか空気が変わった」
「確かにね。だらけた営業部に喝が入ったみたい」


すると「おい、だらけてなんかなかったぞ」と朋生が口を挟んだ。


「でも、随分のんびりだったじゃん」
紀子が笑いながら答える。


「それが俺たちのいいところだったんだよ」
「でも今の方が、みんな生き生きとしてて、カッコイイよ」
紀子が言うと、朋生が「口がうまいねー、紀子さん」と言った。


山科が言っていたことを思い出す。


朋生が誘いたかったのは、わたし?
邪推しすぎなんじゃ、ないかな?


「なに? 園子」
じっと見られていたのに気づいて、朋生が笑いながら園子に笑いかけた。


「ううん、なんでもない。あ、チケットどうした?」
園子が訊ねると、朋生がぐっと詰まったような顔をした。


「紀子に声かける前に、譲り先が決まったんだ」
「……そう、なんだ」


あれ?
朋生の顔を見てると、園子になんともいえない違和感が浮かび上がる。


「ちょっとー、わたし誘ってよ! 暇なんだから」
紀子が口を尖らせる。


「悪い悪い、また今度な」
朋生は視線をそらして、席を立ち上がった。


「出てくる」
「ん、わかった。帰社は?」紀子が聞くと「歓迎会に直で行くよ」と答えた。
「わかった。いってらっしゃーい」
紀子が手を振る。


朋生は鞄を抱えて、どこか慌てたような感じでオフィスを出て行った。


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