会社で恋しちゃダメですか?



「園子、これ倉庫に持って行ってくれる?」
紀子が足下の段ボールを指差す。


「わたし、おつかい頼まれてて、急いでるの。ゴメン」
「いいよ」
園子は快く受ける。


そろそろ眠くなる三時頃、オフィスもぽかぽかと暖かい。


紀子は鞄を掴むと、慌てた様子でオフィスを出て行く。紀子が主にサポートしている、営業の小野寺さんは、突然仕事をふってくる。しかもぎりぎりで言ってくるものだから、たまらない。紀子はいつも振り回されている。


園子はよいしょっとかけ声をかけると、段ボールを持ち上げる。


意外と重い。
これが二個か。
じゃあ、二往復しなくちゃ。


園子が歩き出すと「手伝うよ」と後ろから声がかかった。今社外から帰ったばかりの朋生が、ジャケットをポイッと椅子になげると、園子の方へとやってくる。たぶん朋生は以前運動部だったのだろう。動きがいつも飛ぶようで、軽快だ。


「ありがとう。助かる」
園子は素直に申し出を受けた。


段ボールを担いで、二人で廊下を歩く。


昼でも、倉庫のある地下階は薄暗い。園子はこの間のことを思い出して、思わずゾクッとした。倉庫の鍵をポケットから取り出し、重い扉を開ける。真っ暗で、ほこりくさい。電灯のスイッチをいれると、蛍光灯がまたたいた。


棚が等間隔に並べられて、そこにはラベルで区別された段ボールが置かれている。園子は段ボールのラベルを確認して、右手の棚へとその箱を持って行く。上から二段目が空いていたので、園子は力の限り腕をのばして、段ボールを持ち上げようとしたが、バランスを崩す。すると、朋生がひょいっと後ろから段ボールを持ち上げて、ぽんとその棚へと置いてくれた。

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