444~replay~
タクシーに飛び乗ると、アタシ___山本博実は濡れた髪と肩をハンカチで拭いた。


……なによ、あいつ。


腹が立っている原因は、あの父親に他ならない。

勝手に出て行ったくせに、純子にだけは甘かった男。

絶対、あのふたりはデキていたに決まっている。

純子は否定していたけど、口でならなんとでも言えるもの。

結局、どの男も若い女が好きなのだ。

40歳をすぎて『アタシ』なんて言ってる女は、見向きもされない。

養育費の支払いは毎月あったが、そんなの微々たるもの。

手っ取り早く稼げる水商売についたものの、指名をとるのも相当の努力が必要だった。

せっかく同伴までこぎつけても、次にその客が来たときには若い子に乗り換えられていたり。

そんなのばっかり。
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