ずっと隣で・・・
だが・・・
案の定
「葉山さん」
英斗がわざとらしく私を苗字で呼んだ。
美鈴は目で、出口の方を指した。
私は軽く頷くと美鈴とビルの出入り口に向ってそのまま歩き出した。
英斗が何度か名前を読んでいたが、その声が聞こえなくなり
美鈴とホッとしたのだが
「葉山君、松本君」
今度は別の人物に呼び止められた。

振り向くと、課長の隣には英斗・・・
課長は私と英斗がつきあってた事を唯一知らない
超鈍感な1人だった。

「今から、篠原と久しぶりに飲みに行くんだが、君たちも一緒にどうだ?
俺の・・・おごりだけど」
おごりって言っただけで食いつくと思ったのだろう。
「ごめんなさい。今日は大学の時の友人と会うことになってるので」
即答する私に課長はあからさまに残念そうな顔をした。
「そんな、即答しなくても・・・」
即答したいくらい今ここにいたくない。
英斗は何も言わず黙って私を見ているのがわかったが
私は課長の方だけを見て頭を下げた。
すると
「私でしたら大丈夫ですよ。おごりなんですよね」
そう言ったのは美鈴だった。
「お~~おごりおごり。よかった~~ヤロー2人じゃつまらないと思っていたんだ」
美鈴は私の腕を引っ張ると
「この場は私に任せて!絶対に千鶴に近づかせないようにお灸をすえてやるんだから」
「美鈴・・・」
「本当は・・・デートなんでしょ?その話はまた後日ゆっくり聞くから
あんたは早く行きな」
私は口だけでありがとうと言うと、再度課長に挨拶をして
弦の待つ待ち合わせ場所へ向かった。

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