ずっと隣で・・・
私も渋々彼の後ろをついていった。
弦がすぐエレベーターの方に向かうので慌ててついていった。
「チェックインって?」
「千鶴に会う前にチェックインは済ませておいた」
それだけ言うと上りのボタンを押す
数字が8・・・7・・6・・と下がる間私たちは
無言で数字を目で追っていた。

それから間もなくエレベーターのドアの一番上のランプが点滅した。
ドアが開くと乗っていた数人の宿泊客が降り
その後に弦が先に乗り込む。

私も戸惑いながらも乗ると
エレベータは私たち2人だけだった。
11階の弦の部屋まで私たちは無言だった。
その無言が余計に私を不安にさせた。
それにもうひとつ気になっていたことがあった。
それは英斗が私に声をかける前に弦が私に言った言葉だった。

『俺は千鶴のこと友達だなんて思ってない。千鶴が友達だっていうから
話を合わせていただけだよ・・・俺はずっと・・・お前の事を・・・』

お前の事を・・・その後に続く言葉は何だったんだろう。
それに・・・友達だと思ってないって・・・・
聞きたい事はいくつかあるけど、でもなんでここでなんだろう・・・
ホテルだよ。ビジネスだけど・・・
話が終わったら私・・・帰ろう。
いくら友達だといっても男と女だよ・・・・
それに元彼・・・ダメダメ用が済んだら即帰る

弦が部屋の
ドアを開けるとお先にどうぞと言われ、戸惑いながらも中に入る。
ビジネスホテルと言うよりもシティーホテルの様だった。
しかも部屋はツイン?!
なんでツインなのかと思ったが、それよりも部屋の内装に私は驚いた。

「なんか凄く綺麗な部屋じゃない?これでビジネスって・・・
だから人気がある訳ね」
さっきまでの不安を忘れてしまうほど見入ってしまった。
ベッドの周りやバスルーム・・・・
「ねぇ・・・ここの壁紙もすてきね~~」
まるで部屋探しでもしてるカップルの様に・・・
って何変な想像してるの?
洗面台に手をついて溜息をつき顔を上げた。
すると私の後ろには壁にもたれながら腕組して口角を上げた弦が鏡に映っていた。
目が合うと、フッと小さな笑い声が聞こえた。
「相変わらず面白いな~。喜んだり、不安になったり、落ち込んだり・・・
どうせ変な妄想でもしてたんだろ?」

あまりの図星に顔を上げられずにいた。

「部屋も気に入ってもらえた様だし…向こうで話さないか?」
弦がベッドのある方を指さしたので
黙ってうなづいた。

一体今から何を話すの?
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