花明かりの夜に
「新入りの沙耶さんと持ち場を交代しろ、だなんて。

奥方さまのお着物を飛ばしたのがあたしだって、バレちゃったのかしらね」


桂は芝居がかったしぐさで肩をすくめた。


「まぁいいけど。新入りの仕事の方が楽だもの」


いたずらっぽく沙耶にほほえみかける。


「でもほんと、沙耶さん。昨日は助かったわぁ。

あなたがあんなに身軽だなんて、ビックリしちゃった。

何かやってたの?」

「え……あの……そういうわけじゃ……」


率直な問いに、沙耶はひるむように一、二歩下がって言葉を濁した。

視線が困ったように床をさまよう。
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