白いジャージリターンズ~先生と私と空~

放課後の廊下【先生目線】


-放課後の廊下-  【先生目線】


今日は朝から何人の生徒を呼び出しただろう。

GW明けは毎年、俺の出番が増える。

4月に入学した1年生の中の数人が髪を染め始めるのもこの時期からだ。

スカート丈が短くなるのも、遅刻が増えるのも、5月。


「お疲れ様です。喜多先生も今日は大変でしたね」

「いやいや、新垣先生もお疲れさん」


生活指導室で、喜多先生とコーヒーを飲んで、俺は体育教官室へと向かう。

同じ疲れでも、叱ったりする疲れって、本当にどっとくるんだよ。
体育で思いっきりサッカーしたりする疲れの方が、いい。

話の通じない子が多くて、今日は本当に疲れた。

まず、目を合わせない。
俺の話を聞こうともしない。

そういう生徒を毎年たくさん見てきているけど、卒業する時には、みんな変わってくれてるんだよな。

だから、大丈夫なんだって自分に言い聞かせるけど、なかなか自信がない。


俺も歳を取ったかな。


校庭の部活動の様子を、廊下に立ち止って眺めていた。

あの頃と同じ景色。
同じ空の色。
同じ匂い。


直がいたあの3年間。


ここでこうして夕日を眺めている時、直が俺に声をかけたっけ。


今でこそもうないけど、直が卒業してからすぐは、まだ校舎のどこかに直がいるんじゃないかって探してしまうこともあった。


ここで恋をした矢沢直が、今の俺の妻で、それはわかってるんだけどな。


時々、会いたくなる。


あのちょっと寂しい瞳をした消えてしまいそうな高校生だった直に。


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