「――それじゃあ、俺らは二軒目行くから」

「またな透吾。亜子ちゃんと佳子ちゃんも気を付けて」


午後十時過ぎ。私、編集長、佳子以外のメンバーはまだ飲み足りないとかで別のお店に行くらしく、ビルの前で彼らと別れた。

曇り空で星の見えない夜空の下、楽しそうな五人の後姿を見送り、少し肩を落としたように見える佳子。

……収穫なし、ってことが悔しいのかな。

色々話を聞いてあげたいところだけど、私にはまだやることが残っている。

私はバッグを探り、ハート型の革製キーホルダーのついた家の鍵を佳子に差し出して言う。


「ゴメン佳子、先に家帰ってて?」

「え、なんで……」


そう言いかけた佳子が、私と、その後ろに立っている編集長の顔を交互に見る。

そして苦々しくため息をつくと、私をじろりと睨んだ。


「……お姉ちゃんの浮気者」

「え? ……あぁ、違うよ? ちょっと、編集長と一緒に調べたいことがあるだけで」

「はいはい、調べたいって、どうせ体の相性とかでしょ?」

「そ、そんなわけないでしょ!」


……何を言い出すんだかこの子は全く。

拗ねたようにそっぽを向く妹の姿に呆れていると、後ろにいた編集長が私たちの間に立って、ジーンズのポケットから黒い革財布を出した。

その中から一万円札を取り出し、佳子の手にそっと握らせた彼が言う。


「……悪いけど、姉貴ちょっと借りるな。これでタクシー使ってくれ。夜の一人歩きは危ないから」

「……! は、はい」


わ、編集長、あの佳子を黙らせるなんてすごい。
……じゃなくて!

上司に妹のタクシー代出してもらうなんて、申し訳なさすぎる!


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