“外で待ってる”の言葉通り、すぐ近くのビルの外壁に背中を預けて立つ編集長を見つけると、私はゆっくり近付いて行って、なんとか笑顔を作った。


「――ありがとうございました。やっぱり、黒でした。……もう、どうしようもないくらい。真っ黒、でした」


そう言い切ると、同情するような眼差しを向けられているのがわかった。

私はそれを真っ直ぐに見つめ返すことはできなくて、スタジャンの袖から覗いた手でせわしく自分の前髪を撫でながら、乾いた笑みを洩らしつづける。

すると小さく息を吐いた編集長が、私を見下ろしたままで静かに話し出す。


「……アイツ。店で会った時、お前のこと見て、“もしかして仕事か”と聞いてただろ。その時から薄々感じてたんだ、お前に対する愛情が薄っぺらいんじゃないかって」

「……? どうしてですか……」


仕事だと思われたのは編集長と一緒にいたからであって、そこに愛情も何も関係ないと思うんだけど……


「その格好」


編集長の視線が下から上にと往復して、それからまた私の目を見て言う。


「……どう見ても仕事用じゃねぇだろ」

「あ……」


私は思わず声を洩らし、それからワンピースの裾のレースをつかんだ。

そうだ……これは合コンを意識して着た女子っぽさ重視の服。……たぶん、渡部くんとのデートにも着て行ったことだってある。

職場が違ったって平日に会うこともあるから、仕事の時の私の服装だって、彼は何度も見たことがあるはずで……

つまり。


「……ホントに。どうでもよかったんですね、彼は私のこと」


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