俺様富豪と甘く危険な恋

セレブな男の気遣い

「帰るぞ」

「レン様、これから周氏と夕食会の予定が入っています」


周氏とは香港に30店舗の宝石店をかまえるオーナーだ。

50歳代の無愛想な男性だが、蓮の母親の親戚にあたる。蓮の両親は3年前、パリを旅行中に交通事故で亡くなっていた。


「今日はキャンセルだ。今は彼女を考えなければ」

「それはそうですが、トニーと他の者がいますし、捕まえた男は警察に引き渡しているので、緊急ではないかと」

「代わりに出るか?」

「……いえ。周氏は私では満足しませんから」


周氏はあくまでも朝日奈コーポレーションの社長、蓮と会いたいのだ。仕事の話はもちろんのこと、周氏の娘の婿候補として。

蓮は歩きながら上着を羽織ると、オフィスのドアを開けた。

オフィスを出ると秘書のデスクがあり、蓮を見ると女性社員が素早く立ち上がる。

父の後を引き継ぎ社長となった蓮の経営する朝日奈コーポレーションは、香港とロンドンにオフィスがあり、世界各地の宝石を仕入れて売却する会社だ。

従業員は200人に満たない会社だが、彼らの給料は日本の一流商社よりも良いと言われている。

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