キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「そりゃあ、裏方の仕事は平尾さんに任せておけば間違いありませんから」

「あら、まあ……」

「店がキレイなのは良いことです」


店長はそうフォローを入れると、いつも通り予算と注意事項の連絡をし、朝礼は解散となった。


今日はあいにくの天気だ。

横殴りの雨が、お店のガラスに容赦なく叩き付ける。

今日は植栽の世話はできないけど、晴れたらガラス掃除をする口実ができる。良かった。

そんなことを思い、杉田さんから逃げる口実ばかり考えている自分が情けなくなる。

そんなとき、加工台から店長の声がかかった。


「ハツ、ちょっと」


急いで行くと、そこには組み立てる前のフレームとレンズが。


「加工を教えてやるから、簡単なものだけでも覚えろ」

「は、はい。でも、なんで急に?」


裏方仕事を教えると、私が接客を面倒臭がって表に出なくなるからと言って、他の男の人にも私に加工を教えることは禁止していたはず。

今思えば、何て情けない理由だろう。


「来週、俺がいない日が多いんだよ。もし当日加工が入った時に、杉田さんや長井が補聴器や難しいお客に捕まってたら、お前がやるしかないだろ」


お店には在庫のレンズもあって、特殊な度数や特殊なフレームでなければ、急いで当日に作ることもできる。

綺麗につくるにはパソコンでレンズをカット注文して2・3日かけるのが望ましい。

けれど、前のメガネが壊れてしまった等のやむを得ない事情があるときは、当日加工になることがあるということだ。


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