キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
仕事と聞いて、胸が痛んだ。
私に厳しくするのも、優しくするのも、それは私が店長のお店の従業員だから。
守ってやるなんて言われて、少し舞い上がった気持ちが、冷えて固まっていくのを感じる。
ちょうど雨も小降りになってきて、私はのっそりと店長の車から降りて、傘を広げた。
ぱらぱらと、雨粒が傘を打って落ちる。
「ありがとうございました。おやすみなさい」
やっとそう言うと、店長も「おやすみ」とひとこと言った。
ドアを閉めると、その小さな車はさっさと駐車場から出ていってしまう。
少しでも長く見送っていようと思ったけれど、車はすぐに見えなくなってしまった。
つかみどころのない人だ。
私のために怒ってくれていると思えば、それは店長の仕事だからと言って突き放す。
試験があるのに送ってくれて、それでも家には上がらない。
彼が何を考えているのか、さっぱりわからない。
わからないから、余計に知りたくなってしまう……。
矢崎店長。
私はいつか、ただの従業員から昇格できる日が来るのでしょうか。
どれくらい努力したら、あなたに想いを打ち明ける資格が手に入りますか。
早く言ってしまって楽になりたい。
けれど、言ってしまえばもう、後戻りはできない。
「……好きです、店長」
ぽつりとつぶやいた本音は、雨音の中に溶けて消えていった。