キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「あの方、足は悪いようでしたけど、まだまだお元気ですよ。お客様を馬鹿にするような発言はやめた方が良いのでは?あと、私はあなたの思っている通り、何もできないへっぽこです。注文を間違えるといけないので、もう話しかけないでください」
ぴしゃりと言い返すと、平尾さんはぐっと喉をつまらせたような音をさせて、何も言わなくなった。
はースッキリした。もう嫌われててもいいや。私は仕事に集中しよう。
店長みたいに筋の通った注意や忠告は聞く意味があるけれど、ただの嫌味はその価値に値しない。聞き流すに限る。
「売上入力は私の仕事なんだから、置いておいてよねっ」
震えたような声が後ろから聞こえたので、注文が終わると同時にパソコンを離れた。
相手にしない、相手にしない。
「……お前なあ。あれじゃ火に油を注ぐようなものだろ。聞こえないふりしておけよ」
加工台にいた店長にもやりとりが聞こえていたみたい。
呆れたように言われて、ムッとして言い返す。
「だって、お客様のことを『ボケてる』なんて言うんですよ」
「そりゃ平尾さんが悪いよ。けど、お前が言うと角が立つだろ。そういうのは俺が言うから」
だって、聞こえてるなんて思わなかったんだもん。
思わず頬を膨らませると、矢崎店長はぷっと吹き出した。