白、黒、灰色、茶色、これは……ベージュか。ん、この緑っぽいのはたぶんカーキ色。

自分の家の小さなウォークインクローゼットの扉を開けて、中の洋服を見回し、私は大きくため息をついた。

現在五月の最終週。

衣替えといえば六月っぽいが、すでに夏日が何日も続いたりと、初夏を通り越して蒸し暑い日ばかりなので、厚手のものは衣装ケースの奥の方に押しやっていき、薄手のものは徐々に前に出してはいる。

だが年間を通じて、「白、黒、灰色、茶色、ベージュ、カーキ色」という六色の顔ぶれが変わることはないだろう。


今着ている服は、何の変哲もない白いブラウスに灰色のカーディガン、そして黒のタイトスカート。

そう、色だけでなく、形もみんな同じようなものばかり。

カーディガンの下はブラウスでなくカットソーのときもあるが、その程度のバリエーション。


三年ほど前、事務所に入所する前に、鈴木先生に「あまり華美な服装でなければいい」と言われたのを、律儀すぎるほど律儀に守り続けた結果というか。

所長の妻という身分の亜沙子さんならともかく、きらびやかな先生方のおそばにいさせていただけるというポジションがお客様からの反感を買いかねないからこそ、自分の分をわきまえねばと厳しく律し続けた結果というか。

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