オトナの恋を教えてください
柏木さんは、大きな手を丸め、私の頭を柔らかくたたく。

これは……女子憧れの頭ポンポン。
初体験!!だけど、そうじゃなくて!!


「ちょうど、会社に馴れ始めて疲れが出る時期だもんな。あんまり思いつめずにやりなよ」


柏木さんは遠慮がちに言うと、私の横を通り過ぎて自分のフロアに向かって去っていく。

どうやら、仕事に疲れた新入社員の世迷言と取られたみたい。


「わ……私、本気ですー!」


一応、背中に向かって叫んでみるけれど、柏木さんは背中を向けたままヒラヒラ手を振っただけだった。


おかしい。
私のプランと違う。

予定では、早速二人で手に手をとって、ホテル街へ消えるはずだったのに。

今夜にもメイクラブのはずだったのに!



三条いろは、23歳。
人生最初で最後の冒険は、この日スタートした。






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